花粉症のツライ時期になりました〜抗アレルギー薬を内服するとなぜ「眠気」が出るの?

今日は春先になるとツライ花粉症について記載したいと思います。筆者も長年花粉症を患っており抗アレルギー薬が欠かせない日々を過ごしています。さて、「花粉症の治療薬である抗アレルギー薬を飲むと眠くなって、、」という経験をした方も多いのではないでしょうか。では、なぜ花粉症の治療薬である抗アレルギー薬を飲むと眠くなるのか、について少し掘り下げてお話ししてみたいと思います。

私事ですが、先日は勤務中にコンタクトが上まぶたの裏側にくしゃっとなって隠れてしまい、取れなくなって非常に焦りました。初めての経験でしたが、コンタクトの迷入は時々あるようですね。勤務先の眼科をあわてて受診し、探し出してピンセットで取り出してもらいました。その時の感謝といったら表現しきれなかったです!(笑)

さて、本題に入ります。

花粉症では、花粉を抗原としてアレルギー反応が起こると、体内でヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出されます。その結果、鼻水・鼻詰まり・くしゃみ・目の痒みといった症状が引き起こされます。花粉症とはいえ人それぞれで、何の花粉に反応するかによって患う時期は異なってきます(参照:花粉カレンダー)。有名なのは春先のスギやヒノキによる花粉症ではないでしょうか。最近は朝のニュースで「今日は花粉の飛散が多くなるでしょう」といったコメントを耳にすることが増えました。日本の2008年の全国疫学調査(花粉症環境保健マニュアル、参照:環境省)によると、3人に1人が花粉症、4人に1人がスギ花粉症を有していたそうです。まさに花粉症は日本の国民病ですね。

筆者は高校生の頃から花粉症に悩むようになり、耳鼻科で抗アレルギー薬を処方してもらうようになりました。当時処方されたのはタリオン(一般名ベポタスチンベシル酸塩)でした。このタリオンは2000年に販売開始されたヒスタミンH1受容体拮抗薬で、2021年現在では少し古い薬になりました。最近では、2016年にデザレックス(一般名デスロラタジン)やビラノア(一般名ビラスチン)、2017年にルパフィン(一般名ルパタジンフマル酸塩)と、次々と新しい薬が発売されています。

花粉症に処方される抗アレルギー薬は主にヒスタミンH1受容体拮抗薬になります。このヒスタミンH1受容体拮抗薬で問題となる副作用に「眠気」があります。花粉症を引き起こす点では悪者と思えるヒスタミンですが、実は脳においては重要な役割をはたしています。

少し難しくなりますが、脳の神経細胞にもヒスタミンH1受容体は存在しています。ヒスタミンは、H1受容体を介して脳の神経細胞に定期的に刺激を与え、神経細胞の活動性を高めることで、人間の覚醒や集中力を維持する役割を担っています(参照:東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)。

花粉症の治療のためにヒスタミンH1受容体拮抗薬を内服し、脳の神経細胞のヒスタミンH1受容体まで拮抗されてしまうと、ヒスタミンによる神経細胞への刺激が入りにくくなります。その結果として眠気が生じるのです。この「眠気」は、例えば受験生であれば授業中に眠くなって勉強どころではなくなってしまったり、社会人であれば乗り物の運転中に眠くなって命の危険にさらされてしまったり、我々の身近な問題に直結するわけです。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬といっても、薬剤によって「眠気」を引き起こす程度には差があります。あくまで一例になりますが、薬剤の添付文書に「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に注意させること(アレジオン(一般名エピナスチン塩酸塩、参照:KEGG))」や、「眠気を催すことがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作には従事させないよう十分注意すること(アレロック(一般名オロパタジン塩酸塩、参照:KEGG))」などの記載があり、注意喚起されています。

比較的「眠気」を引き起こしにくいといわれるヒスタミンH1受容体拮抗薬もいくつかあります。アレグラ(一般名フェキソフェナジン塩酸塩製剤、参照:KEGG)やクラリチン(一般名ロラタジン、参照:KEGG)、デザレックス(一般名デスロラタジン、参照:KEGG)、ビラノア(一般名ビラスチン、参照:KEGG)です。例えばビラノアの添付文書には、「ドライビング試験により自動車運転能に及ぼす影響を評価したとき、本剤の自動車運転能に及ぼす影響はプラセボと有意な差を認めなかった」と記載されています。

この記事では花粉症治療薬と「眠気」についてまとめてみました。花粉症に使用する抗アレルギー薬といってもたくさんの種類があります。どの薬剤が適切かは個々人の病状や生活環境によって異なります。ぜひ主治医の先生と相談しながら、自分に合う薬を選択してくださいね。

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