前回の記事では花粉症治療薬の中には「眠気」を引き起こすものがある、というお話をしました。今回は花粉症の治療について、「漢方薬」という切り口からお話ししてみたいと思います。
筆者は一年を通して何らかの花粉によるアレルギーに悩まされています。症状は典型的なくしゃみ・鼻水・鼻詰まりです。今ではヒスタミンH1受容体拮抗薬は欠かせない常用薬となってしまいました(笑)。そんな筆者ですが、スギやヒノキ花粉のシーズンは、ヒスタミンH1受容体拮抗薬のみでは症状が落ちつかないことを多く経験します。特に、鼻水や鼻詰まりがひどいと息苦しく、仕事中も大変不快なものです。
そういえば一昨日、2021年3月21日をもって1都3県に発出されていた新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言は解除されました。しかし、少なくとも新型コロナウイルスワクチンの接種を済ませるまでは、毎日マスクをしながら生活をすることになるでしょう。マスクを常時つけているだけでも息苦しいのに、花粉症で鼻水や鼻詰まりがあると余計に息苦しくなってしまいますよね。
筆者は、花粉症に対して西洋薬を内服しても、鼻水や鼻詰まりがつらい時は、漢方薬の「小青竜湯(参照:KEGG)」を頓服で使用しています。この小青竜湯は、「鼻アレルギー診療ガイドライン」でも取り上げられている漢方薬で(参照:日本東洋医学会、診療ガイドライン・タスクフォース)、花粉症治療において有名な漢方薬となっています。
漢方薬というと「長く飲まないと効果がないのでは?」と疑問があがると思います。それは、漢方薬によって様々です。「小青竜湯はすぐ効くの?」と聞かれると、「意外と早く効果を実感できますよ」と答えます。筆者の個人的な感想にはなりますが、30分もすれば鼻水が止まり、鼻が通ってくるように感じます。この小青竜湯はヒスタミンH1受容体拮抗薬でみられるような「眠気」は生じないので、車の運転にも影響しません。余談ですが、五味子という生薬が入っていて、味が酸っぱいのが特徴的です。
「漢方薬って高いですよね?」と聞かれることがあります。具体的に計算してみたいと思います。ある人がビラノア20mg(薬価71.3円/錠、参照:KEGG)と小青竜湯を1日1〜2包(例えばツムラの場合は薬価39.6円/包、参照:KEGG)を内服しているとします。純粋な合計薬価は1日あたり、10割負担で110.9〜150.5円、漢方薬も保険適応ですから3割負担で33.27〜45.15円です。ちなみに、3割負担で30日だと998.1〜1354.5円になります。計算が正しいかは不安ですが(笑)。
あくまで筆者個人の印象ですが、確かに漢方薬は少しお高いかもしれません。というのも、ビラノア20mg 1錠より小青竜湯2包の方が薬価が高いからです。しかし、筆者のようにヒスタミンH1受容体拮抗薬の内服のみでは効果不十分な場合を考えてみてください。「眠気」を許容して西洋薬を追加・調整するのか、「眠気」の生じない小青竜湯を追加するのか。もちろん状況にもよりますが、車の運転や、集中力を要する業務に従事するのであれば、小青竜湯を追加してみるのも良い選択ではないでしょうか。
今回は花粉症の治療に「小青竜湯」もありますよというお話をしました。小青竜湯の利点は「眠気」が起こらないことですね。一度試してみてはいかがでしょうか。