IBD患者における新型コロナウイルス感染症の耳より情報〜CCFJ WEB講演会に参加して

こんにちは、医師でクローン病患者のtoroです。2021年3月20日、題名にある通りCCFJのWEB講演会に参加してきました。まさに今話題の新型コロナウイルスのお話です。さらに、IBD(炎症性腸疾患:クローン病と潰瘍性大腸炎を含む、参照:日本消化器病学会ガイドライン)と新型コロナウイルス感染症ということで、クローン病患者の筆者にとってはとても興味をそそる講演内容でした。有益な情報のいくつかを元に話を膨らませてみたいと思います。

CCFJ(日本炎症性腸疾患協会)は2003年10月に発足したNPO法人で、IBD専門の医師を主体に運営されている協会とのことです。筆者自身は2020年9月に入会したばかりの新参者です。今回の講演会は2021年2月に案内状を葉書でいただきましたが、ホームページにも案内はあり(参照:CCFJ)、非会員でも問い合わせることで参加可能な講演会です。

東北労災病院の高橋賢一先生、さいたま胃腸クリニックの篠崎大先生がご登壇され、その後に杉田昭先生、小金井一隆先生、板橋道朗先生、大森鉄平先生が加わり、質疑応答を行う流れで講演会が進行されました。名だたる先生方の講演が聞け、さらに参加者の質疑に丁寧に答えてくださるという、何ともありがたい!講演会でした。これは紹介せずにはいられないと思い記載しておりますが、前置きはこれくらいにして本題に入りたいと思います。

IBD患者さんが新型コロナウイルスにかかりやすいのか気になるところですが、現時点でかかりやすいもしくは重症化しやすいというデータはないそうです。IBD患者さんでは病院や公共のトイレなどのウイルスが持ち込まれやすい環境を利用することが多いので、「マスクや手洗い、消毒といった感染予防をしっかりしましょう」と指摘されていました。

日本では、 IBD 診療における新型コロナウィルス感染症に関する正確な情報を周知するために、難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(JAPAN IBD COVID-19 Taskforce)が発足しました。そして、随時調査結果を報告しており、IBDでステロイドを使用している患者さんは、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合に重症化しやすいと報告しています(参照:JAPAN IBD COVID-19 Taskforce 第9報)。ただし、ステロイドを使用しないようにという話ではなくて、IBDの病状が悪化して高容量のステロイドが必要な状態にならないように、日々の治療をしっかり行いましょうということのようです。

さて、IBD患者さんは新型コロナウイルスワクチンを打ったほうが良いのでしょうか?講演会で質疑応答されたどの先生方もワクチンは打ったほうが良いとおっしゃられていました。まず、新型コロナウイルスワクチンはmRNAワクチンで、mRNAがヒト細胞内に侵入するとそれを元に抗原となるタンパクが合成されます。そして、作られた異物であるタンパクを抗原として、体内で抗体産生が誘導されます。結果的には、インフルエンザウイルスワクチンなどのような不活化ワクチンを打つのと同様のイメージで、新型コロナウイルスワクチンを打って新型コロナウイルスに感染してしまうということは理論的にないわけです。これはとても安心できる情報ではないでしょうか。IBDの患者さんは少なからず免疫を抑制する治療を受けているわけですから、他の感染症にかかって病状が悪化しないように例年インフルエンザウイルスワクチンを打つように、新型コロナウイルスワクチンも打ったほうが良いですよねというわけです。詳細は、「IBD患者における新型コロナウイルスワクチン接種に関するQ&A(参照:JAPAN IBD COVID-19 Taskforce)」としてまとめられたページがあるので参考にされてください。

以上、IBDと新型コロナウイルス感染症に関して講演を聞いて筆者なりに興味を持った点についてまとめてみました。何とも興味深い内容だったではないでしょうか。皆様も是非、CCFJの講演会情報をチェックしてみてください。筆者は医療従事者ですが、まだ新型コロナウイルスワクチンは接種しておりません。もちろん予約はしています。もし、接種することができたら、クローン病患者として副反応がどうだったかなどまとめて記載したいと思います。

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