今日は食事についてお話ししてみたいと思います。
Twitterを見ていると、みなさん美味しそうなお食事の写真をあげておられます。
とても参考になるな、と思って拝見しています。
低脂質食
今日は一番重要な脂質のお話をしたいと思います。
筆者がクローン病(CD)になった当時から、低脂質が推奨されていました。
この考えは、現在も変わりないように思います。
脂質摂取量と再燃率
平成10年の厚生労働省の報告では、1日の脂質摂取量が多いほどCDの累積再燃率が高くなることがわかっています。
このデータによると、1日の脂肪摂取量が30gを超えると、再燃率が大きく高まることがわかります。
このデータを根拠として、1日の脂質摂取量を20〜30gにしましょう、と推奨する情報が多いようです。
10gで4.3%、 20gで14.7%、 30gで50%、 40gで60%、 50gで78%、 60gで89%
ただし、これは栄養療法が主体の時代のものです。
レミケードなどの生物学的製剤が登場して以降、この推奨が同じなのか、明確な答えはないようです。
脂質の種類と炎症性腸疾患との関係性
疫学的には、アジアでの炎症性腸疾患(IBD)の増加は、食生活の西洋化と関連していると報告されています(Thia KT, Loftus EV, Jr, Sandborn WJ, et al., Am J Gastroenterol. 2008; 103: 3167-82.)。
特に、食事におけるn-6系脂肪酸の摂取量の増加と、n-3系脂肪酸の摂取量の減少が特徴的とされます(Marion-Letellier R, Savoye G, Beck PL, et al., Inflamm Bowel Dis. 2013; 19: 650-61.)。
ここからは、脂質の種類と、IBDへの影響についてそれぞれみていきたいと思います
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は、乳製品や肉、卵黄などに多く含まれます。重要なエネルギー源となります。
疫学研究によると、肉(飽和脂肪酸)の摂取量が多いと、IBDの発症リスクが高くなると報告されています(Hou JK, Abraham B, El-Serag H., Am J Gastroenterol. 2011; 106: 563-73.)。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸には、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とがあります。
・一価不飽和脂肪酸はオレイン酸で、オリーブ油や菜種油などに含まれます。
・多価不飽和脂肪酸には、植物油に含まれるn-6系脂肪酸と、魚類の脂肪に含まれるn-3系脂肪酸とがあります。
n-6系多価不飽和脂肪酸
・代表はリノール酸・・・サンフラワー油、ひまわり油、コーン油、大豆油などの植物油
→リノール酸はアラキドン酸へと代謝され、さらに代謝されると炎症促進作用のある物質が合成されます。
n-6脂肪酸の摂取量が多いと、IBDの発症リスクが高くなることが報告されています(Hou JK, Abraham B, El-Serag H., Am J Gastroenterol. 2011; 106: 563-73.)。
n-3系多価不飽和脂肪酸
・α-リノレン酸・・・シソ油、エゴマ油、アマニ油
→α-リノレン酸は体内でEPA、DHAへ代謝されます。
・EPA・・・キンキ、サンマ、マイワシ、ハマチ、ブリ、ウナギ、マグロ、サバなど
・DHA・・・サンマ、マグロ、ハマチ、ブリ、ニジマス、ウナギ、サバなど
→EPAやDHAは炎症を抑える作用があります。
n-3系脂肪酸とn-6系脂肪酸とは共通の代謝酵素を使用するため、n-3系脂肪酸の比率を高めることで、n-6系代謝による炎症を抑制できると考えられています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事ではCDと脂質に関してお話ししました。
「脂質は1日30gまでで、肉よりは魚、寛解を維持して、たまにはハメを外しても」というのは、筆者の発症当時と変わらないように思います。
n-3多価不飽和脂肪酸の抗炎症効果については、新たに着目されてきた内容でしょう。
みなさまの参考になりますと幸いです。ではまた。