クローン病では腸管への負担をあまりかけずに、十分量のエネルギーを摂取する必要があります。
ご自身のエネルギー必要量って意識したことあるでしょうか?
一般の方と、クローン病の方とで、エネルギー必要量に違いはあるのでしょうか?
この記事では、こういった疑問に答えながら、最後に「ハーフED」の有効性についてお話ししています。
【一般的】1日にどれくらいのカロリーを取ればいいの?
【一般的】エネルギー必要量(医師会)
日本医師会のホームページを参考にお話ししたいと思います。
一般的な人のエネルギー必要量は下記の式で求められます。
参照体重(kg)とは、該当年齢の平均的な体重をあらわします。
エネルギー必要量(kcal/日) = 基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日) × 参照体重(kg) × 身体活動レベル
【一般的】あなたが1日に必要なエネルギー量は?
では早速、計算してみましょう。
リンクページに飛び、WEB上で必要項目〔性別、年齢、身体活動レベル〕を入力すると自動計算してくれます。
例えば筆者の場合
〔男性、30〜49歳、レベルⅡ(ふつう)〕だとすると
自動計算で得られた「1日に必要な推定エネルギー必要量」の目安は、2677.5kcalとなります。
いやー必要エネルギー多すぎないか?という印象です。
〔男性、30〜49歳〕の場合、基準身長が170cm、基準体重が68.0kgとのことです(参照:厚生労働省)。
あくまで平均だから、基準体重が大きいのでしょうか。
〔男性、30〜49歳、レベルⅠ(低い)〕だとすると
自動計算で得られた「1日に必要な推定エネルギー必要量」の目安は、2295kcalとなります。
レベルⅠ(低い)くらいが筆者にはちょうど良さそうです。
【一般的】エネルギー必要量(農林水産省)
農林水産省のホームページでも大体似たような値ですね。
〔18〜69歳、男性、身体活動量がふつう以上〕とすると、2400〜3000kcal程度。
〔18〜69歳、男性、身体活動量が低い〕とすると、2200kcal程度。
小括
(男性、30〜49歳、レベルⅡ(ふつう))2677.5kcal
(男性、30〜49歳、レベルⅠ(低い))2295kcal
(女性、30〜49歳、レベルⅡ(ふつう))2012.5kcal
(女性、30〜49歳、レベルⅠ(低い))1725kcal
【クローン病】1日にどれくらいのカロリーをとればいいの?
クローン病では、
エネルギー必要量(kcal/日) = 適正体重(kg) × 30〜35(kcal/kg)、
が推奨されています(出典:クローン病の診療ガイド第3版. 東京. 文光堂; 2021)。
適正体重は以前の記事をご参照ください。
例えば筆者の場合
例えば筆者の場合は、適正体重が62.1kgですので、
エネルギー必要量は1863〜2173kcalとなります。
【クローン病】の活動性が高い場合
活動性が高い状態では、炎症に伴い、エネルギー必要量は増加すると言われます。
その場合は、
エネルギー必要量(kcal/日) = 適正体重(kg) × 35〜40(kcal/kg)、
が推奨されています。
教科書によってはこれが標準としているものもありますね。
ちなみに筆者の場合(適正体重が62.1kg)、エネルギー必要量は2173〜2484kcalとなります。
小括
適正体重(kg) × 30〜35(kcal/kg) 1863〜2173kcal
適正体重(kg) × 35〜40(kcal/kg) 2173〜2484kcal
【一般的】と【クローン病】とを比べて思ったこと
クローン病は、一般的な方と比べて、より多くのエネルギーが必要だ、と長らく思っていました。
しかし、実際はそうでもないようです。
成分栄養療法の有効性
【クローン病】筆者の食事スタイル
例えば筆者の1日のエネルギー必要量が2200〜2300kcalだとしましょう。
エレンタール2本とinゼリー2本とで、1日960kcalを栄養剤から摂取しています。
この場合、1日のエネルギー必要量のうち、42〜44%を栄養剤、56〜58%を食事から取っていることになります。
【クローン病】での推奨
2002年から2005年の間に、東北大学病院を中心とした臨床試験の結果を紹介したいと思います(Takagi S, Utsunomiya K, Kuriyama S, et al., Aliment Pharmacol Ther. 2006; 24: 1333-40.)。
これは、ランダム化比較試験で、信頼性の高い研究結果です。
寛解にある51人のクローン病患者が、半成分栄養(ハーフED(Elemental Diet: 成分栄養療法))群(n = 26)または制限のない自由食群(n = 25)にランダムに割り当てられました。
この研究では、再燃の発生率を主要結果としています。
ハーフED群では、1日のエネルギー必要量のうちの半分である900〜1200kcalを、エレンタール(3〜4袋)で補充しています。
平均11.9か月の観察期間で、ハーフED群は自由食群と比較して、再燃率が有意に低い結果でした(34.6% vs 64.0%; 多変量ハザード比0.40(95%CI: 0.16-0.98))。
小括
筆者もおおよそ1日のエネルギー必要量の半分を栄養剤からの摂取としています
まとめ
治療というものはその有効性が見えないとなかなか自分で進んで受けようとは思えません。
エレンタールによるカロリー補充はともすれば軽くみられがちです。
実際、筆者も長らく摂取しない時期がありました。
最近、筆者は、栄養剤を活用しています。
体調が悪くなったのもあります。
また、論文からハーフEDの有効性を知ることができたのも大きいです。
体調が悪い時、もしくは長期に寛解維持を期待したい場合は、このハーフEDを試してみてはいかがでしょうか。
みなさまのご参考となりますと幸いです。では、また。