【IBD】炎症性腸疾患に大建中湯が有用【TNF-αの抑制】

以前の記事で、「大建中湯の構成生薬と、腸の機能を改善させる働き」についてお話ししました。

この記事では、「大建中湯は炎症性腸疾患に良いですよ」というお話を、エビデンスからみていきたいと思います。

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冷えと炎症性腸疾患

筆者はクローン病で回盲部付近の小腸狭窄があります。
調子が悪いと狭窄症状から鈍い痛みが続くことがあります。
その際に、カイロを貼って温めると楽だな、ということに気づきました。

みなさんも、冷えると腹痛や下痢が悪化し、「温めると改善する」、という経験があるのではないでしょうか?

大建中湯とは

大建中湯は、「お腹を温めて痛みを抑え、胃腸の調子を整える」効果のある漢方薬です。
この大建中湯が、炎症性腸疾患に対して良い効果があるのか気になったので、エビデンスを調べてみました。

生薬構成については下記リンクをご参照ください。

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大建中湯の炎症性腸疾患への応用〜2つのメカニズム

1. 腸管炎症の改善作用

アドレノメデュリン→大腸炎を改善

アドレノメデュリン(ADM)は、免疫細胞の受容体へ結合することで、抗炎症作用を発揮する神経ペプチドです。

・マウスの大腸炎モデルにADMを投与すると、大腸炎の臨床症状および病理学的重症度を有意に改善しました(Gonzalez-Rey E, Fernandez-Martin A, Chorny A, et al., Gut. 2006; 55: 824-32.)。

・ラットの大腸炎モデルにADMを投与すると、体重減少と下痢の発生率とを低下させ、結腸損傷の重症度が低下しました。
また、炎症性サイトカインであるTNF-αのレベルは低下し、抗炎症性サイトカインであるIL-10が大幅に増加しました(Talero E, Sánchez-Fidalgo S, de la Lastra CA, et al., Peptides. 2008; 29: 2001-12.)。

大建中湯→アドレノメデュリン放出を増加→抗炎症効果

・マウスの大腸炎モデルに、大建中湯を投与すると、粘膜損傷と結腸の炎症性癒着を有意に軽減し、結腸における炎症性サイトカインTNF-αの上昇を抑制しました。
また、大建中湯の刺激によって小腸上皮細胞と大腸上皮細胞は、高レベルのADMを産生しました。
これらのことから、大建中湯が、腸管におけるADMを増加させることで、抗炎症効果を発揮することが示唆されました(Kono T, Kaneko A, Hira Y, et al., J Crohn’s Colitis. 2010; 4: 161-170.)。

小括

大建中湯はADMを増加させ、TNF-αを抑制することで、腸管の炎症を抑制する

大建中湯によるTNF-αの抑制は、インフリキシマブと同じ治療ターゲットである
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2. 腸管血流の改善作用

大建中湯→カルシトニン遺伝子関連ペプチド→腸管血流の増加

・ラットに大建中湯を投与したところ、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を介して結腸血管を拡張し、腸管血流が増加することが示されました(Kono T, Koseki T, Chiba S, et al., J Surg Res. 2008; 150: 78-84.)。

炎症性腸疾患→腸管血管の構造変化→腸管血流の低下

・クローン病や潰瘍性大腸炎では、慢性炎症によって腸の微小血管が損傷と修復を繰り返し、血管の構造変化によって血流障害を生じます。
この変化が、創傷治癒の障害に関連し、炎症性腸疾患における粘膜潰瘍を難治化させている可能性があります(Hatoum OA, Miura H, Binion DG, et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2003; 285: H1791-1796.)。

小括

大建中湯はCGRPを介して腸管血流を増加させる

炎症性腸疾患にみられる腸管血流の低下に対して有効である可能性がある

まとめ

いかがでしたでしょうか。

筆者はこの記事を書きながら、レミケードと併用して、大建中湯を続けてみようと思いました。
2021年4月28日現在、ツムラの100番「大建中湯」を1日あたり6包(15g)分3で内服しています。
カイロを貼ると楽になるのは温まって血流が良くなるからでしょうか。

ちなみに臨床研究では、大建中湯はクローン病の再手術率を有意に減少させることが報告されていますKanazawa A, Sako M, Takazoe M, et al., Surg Today. 2014; 44: 1506-12.)。

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