【夢の薬?】六君子湯のグレリンを介した効果【寿命の延長も】

今日は六君子湯という漢方薬についてお話ししたいと思います。

漢方薬の中でもエビデンスが多く報告されており、日常診療で活用される漢方薬の一つです。

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六君子湯はどんな人にいいの?

六君子湯を分かりやすくいうと、胃薬といったところでしょうか。

しかし、ただの胃薬ではありません。
胃の運動をよくしたり、食欲を増したり、さらには健康寿命を延長する可能性まで期待される漢方薬なのです。

添付文書に記載された適応症は下記の通りです(参照:KEGG)。

適応症:
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症;
胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

昔はどのように使用されていたの?

明の時代

六君子湯は、明の時代、龔廷賢(ぎょうていけん、1522-1619)によって編纂された、『万病回春』に記載されている処方です。

実際のところは、元の時代、1337年に書かれた『世医得効方』や、明の時代、1515年に書かれた『医学正伝』が出典だろうと言われています。

『万病回春』の条文には、「脾胃虚弱、飲食少しく思い、或は久しく瘧痢を患い、若しくは内熱を覚え、或は飲食化し難く、酸を作し、虚火に属するを治す。 須く炮姜を加えて其の効甚だ速やかなり」とあります。

『(新刊)万病回春8巻』(京都大学附属図書館所蔵)を改変して使用
『万病回春』の条文から
胃腸が虚弱で食欲がないものや、消化が不十分で胃酸の逆流があるものなどに良い

江戸時代のベストセラー

曲直瀬道三(1507-1594)の原著と言われ、江戸時代のベストセラーである『衆方規矩』には、「脾胃が調わず、飲食を思わず、痰のあるものを治す。また気虚して痰をさしはさみ、飽(いつ)を発するものにもよい」とあります。

痰とは、水毒(水滞)のことで、悪心や嘔吐、胸焼け、上腹部のつかえ、といった症状を指します。
飽とは、ものが喉につかえる意味です。

『衆方規矩』から
胃腸の調子が悪くて食欲がなく、悪心や嘔吐、胸焼け、上腹部のつかえ、といった症状があるものに良い

江戸時代

岡本一抱(〜1716)の『方意弁義』には、「脾胃を補い、元気を養い、湿を去り、痰を退ける」とあります。

『方意弁義』から
胃腸の働きを助けて元気をつけ、水毒による悪心や嘔吐、胸焼け、上腹部のつかえ、といった症状を改善する

使用目標まとめ

六君子湯
胃腸の働きをよくすることで食欲を増し、元気をつけ、悪心や嘔吐、胸焼け、上腹部のつかえ、といった症状を改善する薬
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六君子湯ってどのように効くの?

基礎研究から、六君子湯はグレリンを調節することによって、効果を発揮することがわかってきました。

六君子湯の薬効・薬理:作用メカニズム
1.グレリン分泌促進作用
2.グレリン代謝酵素阻害作用
3.グレリンシグナル増強作用
4.グレリンシグナル伝達増強によるSirtuin1の活性化作用

出典:ライフ・サイエンス.『Kampo Science Visual Review』p.35

グレリンは、1999年に日本人研究者によって発見された、胃から分泌されるペプチドホルモンです(Kojima M, Hosoda H, Date Y, et al., Nature. 1999; 402: 656-60.)。
胃から分泌されたグレリンは血中を循環し、成長ホルモンの分泌を促進させたり、摂食を亢進させたりします。

基礎研究からわかってきたこと

六君子湯→グレリン→胃運動の改善

マウスに拘束ストレスを与えると、胃運動が低下します。六君子湯を投与すると、グレリン受容体を介した作用で、胃運動を改善させました(Nahata M, Saegusa Y, Sadakane C, et al., Neurogastroenterol Motil. 2014; 26: 821-31.)。

野生型ラット及び、パーキンソン病モデルラットにL-dopaを投与すると、胃排出遅延や胃運動性低下がみられます。六君子湯を投与すると、グレリンを介した作用で、胃排出遅延や胃運動性低下を改善しました(Wang L, Mogami S, Karasawa H, et al., Peptides. 2014 ; 55: 136-44.)。

六君子湯は、グレリンを介した機序で、胃運動機能を改善する

六君子湯→グレリン→食欲増進

ラットにシスプラチン(抗がん剤)を投与すると、食事摂取量が低下します。六君子湯を投与すると、グレリンを介した作用で、食事摂取量の低下を改善しました(Takeda H, Sadakane C, Hattori T, et al., Gastroenterology. 2008; 134: 2004-13.)。

シスプラチン投与ラットで、六君子湯の成分である10-ジンゲロールは、活性型グレリンの分解を阻害することで食欲不振を改善しました(Sadakane C, Muto S, Nakagawa K, et al., Biochem Biophys Res Commun. 2011; 412: 506-11.)。

六君子湯は、グレリンを介した機序で、抗がん剤による食欲不振を改善する

六君子湯→グレリン→健康寿命の延長

早く老化する3種類のマウスに六君子湯を投与すると、投与しない場合と比較して、寿命を延長させました。六君子湯を投与することで、グレリンシグナルが増強され、細胞をストレスから保護するでサーチュイン1遺伝子を活性化することで、寿命を延長している可能性が示唆されました(Fujitsuka N, Asakawa A, Morinaga A, et al., Mol Psychiatry. 2016; 21: 1613-1623.)。

六君子湯は、グレリンを介した機序で、健康寿命を延長する可能性がある

まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事では、六君子湯がどのような人におすすめか、またどのようなメカニズムで効果を発揮するのかをお話ししました。

胃の諸症状や食欲不振で悩んでおられる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。
長期でみると寿命を延長してくれるかもしれませんね。

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