【大丈夫?】炎症性腸疾患の○%が大腸癌になる【検査の重要性】

前回は、クローン病患者さんはどれくらい癌になりやすいか?についてお話ししました。

今回は、「炎症性腸疾患患者さんの○○%が癌になるのか」、「日本と海外とでクローン病患者さんの癌のできる部位に違いがあるのか」についてまとめていきたいと思います。

スポンサーリンク

1.クローン病と大腸癌、小腸癌

下記の引用は、1940年から2001年までの、ミネソタ州の692人の炎症性腸疾患患者のコホート研究結果になります。クローン病患者は314人でした。

この報告では、大腸癌(結腸直腸癌)の累積罹患率を算出しています。ここでいう累積罹患率とは、クローン病と診断されてから○年後に癌と診断されるおおよその確率を意味します。

報告によると、クローン病と診断されたのち、「5年後には0.3%、15年後には1.6%、25年後には2.4%」の確率で大腸癌と診断されることがわかります。

また、小腸癌に関しては、5年後には0%、15年後には0.5%、25年後には1.7%の確率と算出されています。

このように、経年的に癌と診断される確率は高くなることがわかります。

The cumulative incidence of CRC then was 0.3% at 5 years (95% CI, 0.0%–1.1%), 1.6% at 15 years (95% CI, 0.0%–3.6%), and 2.4% at 25 years (95% CI, 0.0%–5.8%) after CD diagnosis (Figure 3).

The cumulative incidence of small-bowel cancer after CD diagnosis was 0% at 5 years, 0.5% at 15 years (95% CI, 0.0%–1.6%), and 1.7% at 25 years (95% CI, 0.0%–4.5%).

Abbreviations: CI, confidence interval; CRC, colorectal cancer; CD, Crohn’s disease

Jess T, Loftus EV Jr, Velayos FS, et al. Risk of Intestinal Cancer in Inflammatory Bowel Disease: A Population-Based Study From Olmsted County, Minnesota. Gastroenterology. 2006; 130: 1039-46.
★クローン病と診断されてから25年後に、42人に1人が大腸癌、59人に1人が小腸癌と診断されています。

2.潰瘍性大腸炎と大腸癌

下記の引用は、計116件の研究、54,478人の潰瘍性大腸炎患者のデータを解析した論文になります。

報告によると、潰瘍性大腸炎と診断されたのち、「10年後には1.6%、20年後には8.3%、30年後には18.4%」の確率で大腸癌と診断されることがわかります。

これらの結果からは、潰瘍性大腸炎の方がクローン病よりも、大腸癌のリスクは高いようです。

These decade specific incidence rates correspond to a cumulative risk of 1.6% (95% CI 1.2–2) by 10 years, 8.3% (95% CI 4.8–11.7) by 20 years, and 18.4% (95% CI 15.3–21.5) by 30 years (fig 3).

J A Eaden, K R Abrams, J F Mayberry. The risk of colorectal cancer in ulcerative colitis: a meta-analysis. Gut. 2001; 48: 526-35.
★潰瘍性大腸炎と診断されてから20年後に12人に1人が、30年後に6人に1人が大腸癌と診断されています。

スポンサーリンク

3.クローン病の腸管癌の発生部位、海外と日本の違い

最後に、海外と日本との腸管癌発生部位の違いについて調べてみました。

米国からは、1980年から2007年に結腸直腸癌の手術を受けた症例を解析した報告があります(参照:Ravi P Kiran, Wisam Khoury, James M Church, et al., Annals of Surgery. 2010; 252: 330-335.)。
64例の、結腸直腸癌で手術を受けたクローン病患者の内訳は、「65%が結腸癌、35%が直腸癌」でした。

続いて、下記引用は、2016年日本からの報告になります。
日本の主要な医療施設において過去20年間に治療したクローン病患者3,454人のデータを解析した論文です。
うち122人、3.5%の発生率で腸管癌を発症していました。その122人の癌の部位の内訳ですが、「51%が肛門管癌、29%が直腸癌、8%が結腸癌」でした。

これらの結果からは、日本では米国と比較して、肛門管癌が多いことがわかります。

Cancer was most prevalent in the anal canal (51%), followed by the rectum (29%) (Figure 2).

Daijiro Higashi, Hidetoshi Katsuno, Hideaki Kimura, et al. Current State of and Problems Related to Cancer of the Intestinal Tract Associated with Crohn’s Disease in Japan. Anticancer Res. 2016; 36: 3761-6.
★クローン病患者の腸管癌の発生部位
 米国では65%が結腸癌、35%が直腸癌
 日本では51%が肛門管癌、29%が直腸癌、8%が結腸癌

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。炎症性腸疾患では、癌合併の可能性を想定し、早期発見のためにも、定期的な大腸内視鏡検査を受けることが重要であるといえます。

スポンサーリンク
error: Content is protected !!